研究概要 |
本研究では二つの取得した特許に基づく新しい伎術を基礎に「高多重周波数励磁マルチスキャンニングによる高機能非破壊評価システム」を実用可能なシステムとして開発することを目的として行われてきた。ここで高機能非破壊評価とは,(1)見えない欠陥の探査,(2)欠陥形状推定,さらに,(3)亀裂発生以前の疲労レベルの推定(これは疲労に敏感なルーダース帯の可視化及びカオスアトラクターからの異常発見を意味する。)である。そして,これまでは基礎研究として,放電加工による人工的に作成した極微小の欠陥亀裂を用いて研究さしてきたが,実用化のためには自然欠陥による検討が必要である。以上の点から次に掲げるテーマを研究目的とし研究を行ってきた。 (1)自然亀裂のモデリングと定量的評価手法の確立:自然亀裂はその態様が複雑であり,統一的な解析手法は存在しない。現実的な環境下で,複雑な亀裂形状について深さ,長さ等の定量評価が可能な解析・処理手法が必要で、ニューラルネットワークによる推定アルゴリズムを開発した。 (2)新プローブの提案と携帯可能なシステムの構築:実機適用可能な自然亀裂を対象とした新プローブを開発した。この構造はポジションセンサーを装備したマルチスキャニングに対応できるマトリックスセンサーとなる。ノート型パソコンをメインとし、九州計測器(株)の協力でプログラムのロム化によって、コンピュータ内蔵型のポータブルなシステムを完成させた。また、文字認識装置を利用して位置情報を取得することができるポジションセンサーシステムの構築に成功した。以上によって、簡易的な実用可能システムの開発を得ることができた。 (3)複合亀裂及び自然亀裂に対応できる逆問題解析法の開発。:欠陥形状推定アルゴリズムの開発から、複数個の亀裂の推定は可能となった。 (4)自然亀裂が発生する以前における疲労レベルの推定アルゴリズムの開発:自然亀裂を探査するためには時間軸による探査評価が必要で,疲労と欠陥を区別した非破壊診断評価では未だ不十分である。疲労の進展が欠陥発生・亀裂への発展と続くように,現象の連続性に依拠したシステムの開発を今後引き続き行わなければならないでなければならない。
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