研究概要 |
本年度のおもな研究業績をまとめると次のようになる. 1.非均質材料としてコンクリート製の円柱供試体の内部欠陥を対象とし,全方向からの計測波形を用いて欠陥形状の再構成を行った.現場での計測を意図した場合,同じ非均質材料から参照波形を計測することが困難である場合が多いため,均質材料であるとみなせるセメントペースト中の平面空洞からの反射波形を参照波形として利用するデータ処理方法を提案した.このデータ処理では非均質部の影響を考慮する必要があるが,骨材による位相速度の周波数変化が見られないことから,コンクリートとセメントペーストの群速度の違いのみを考慮する伝播距離・時間に関する補正項を導入した.このデータ処理方法を適用して導出された散乱振幅を用いた場合,ボルン,キルヒホフ両逆散乱法において欠陥形状が再構成できることを示した. 2.既往の円柱供試体における計測では探触子と座標原点の距離が計測点によらず常に一定であったのに対し,平面計測の場合は各計測点によってその距離が変化するためこれを考慮する必要がある.そこで,探触子と送信焦点間の距離を考慮した散乱波に関する逆散乱法を定式化し,散乱振幅と散乱波の関係を導いた.この関係を利用し,二点での散乱波から散乱振幅を導出するための距離補正項を導入した.また,理論上の散乱波と実際の計測波形とは一致しないため,ウェッジ-母材間の透過係数や母材の減衰量を考慮するデータ処理方法を提案した.そして,P波およびSV波を用いた逆散乱解析を行い,欠陥形状がある程度再構成できることを示した.
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