研究概要 |
社会基盤施設の建設が大量に行われてから30年以上が経過し,強風に起因する損傷や事故が顕在化しつつある.今後この傾向はますます顕著になると考えられる.土木構造物に及ぼす強風の影響は施設の維持管理と運用面から重要であり,特に台風時の強風は架空送電線鉄塔や橋梁などの社会基盤施設に及ぼす影響が重大であり,高精度の強風予測システムの開発は不可欠である. そこで,本研究ではまず3次元非圧縮体の質量保存式と運動量保存式に基づく局地強風予測モデルを作成した.このモデルは一般曲線座標に基づく有限体積法と非直交コロケート格子を用いることにより剥離を含む任意地形状の流れ場の解析を可能し,また数値解法としては数値的な振動が発生しない圧力加重補間法に基づくSIMPLE法を用いることにより非線形連立方程式の解を安定して求めることを可能した.次に実地形上の流れを解析するために,連綿と連なる地形の一部を取り出す際の境界処理手法を確立した.具体的に,側面の境界処理方法としては地形上の任意断面における流量が保存する手法を提案し,従来の境界処理による風速の過大または過小評価問題を解決し,実地形の全ての部分を用いて計算した速度場と一部を取り出して計算した速度場はほぼ一致するという結果を得た.また上流の境界では対象領域と同じ程度の大きさのバッファ領域を設置することを提案し,上流の地形の影響を正しく反映させ,かつ付加計算量を最小にする上流境界処理方法を実現した.最後に解析の高速化のために,大規模線形連立方程式における従来の解析法について詳細な比較検討を行い,短時間かつ安定に計算を収束させることのできる残差切除法を用いることを提案し,100万格子点での風速と乱れを1時間程度で求めることを可能にした. 14年度は九州地域における風観測ネットワークから得られた強風データを用いて,新しい局地強風予測システムの精度検証を行う予定である.
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