研究概要 |
本研究は,超音波シミュレーション解析技術を開発して非均質異方弾性体に対する超音波非破壊検査の精度と効率化の向上を目的とするものである.本年度は3年計画の最終年度として,1.境界要素法と波線理論による結合解法の改良,2.超音波シミュレータのプロトタイプシステムの開発,3.超音波シミュレータの実験計測による検証を行った.得られた主な結果は以下の通りである. 1.境界要素法と波線理論による結合解法の改良:探触子による入射波動場を波線理論の一種であるマルチガウシアンビームで表し,欠陥による散乱波動場を境界要素法によって求めることによって,超音波の伝播・散乱シミュレーションを実施した.これによって,曲率を有する構造材料における解析や斜角探触子の特性を考慮した超音波シミュレーションが可能となった. 2.超音波シミュレータのプロトタイプシステムの開発:ラップジョイント,T型継手部,十字継手部などの比較的大規模な反射散乱問題をシミュレーションするための多重極境界要素法を開発した.従来の解析手法に比べて,5倍から10倍の計算速度で解析を実施することができるようになった.また,異方性基本解を用いた汎用性のある超音波シミュレータを開発した.これによって,固体内の空洞,き裂,ならびに,介在物などの欠陥による超音波の散乱現象を容易にシミュレーションできるようになった.欠陥の形状や個数,配置,ならびに,材料定数などは計算容量の許す範囲で任意に設定できる. 3.超音波シミュレータの実験計測による検証:鋼材の非均質性ならびに異方性を考慮した超音波シミュレーションを行い,実験で得られた波形と比較するとともに,開口合成法によって欠陥の画像化を試みた.これによって,欠陥位置の推定精度が向上した.
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