研究課題
地震時の砂質地盤の液状化に起因する被害を防ぐために、セメント系固化材と原位置の土を地中で撹拌混合して固化させる地盤改良工法の適用例が近年増加している。このような固化処理工法による改良地盤は高いせん断強度と剛性を有するが、砂のような粒状体材料が母材であるために引張強度は必ずしも高くはない。これまでは、既往の室内試験結果に基づいて一軸圧縮強度の15%程度が引張強度の設計値として用いられてきた。しかしながら、兵庫県南部地震以降は、稀に発生するような大規模な地震を想定した設計も実施されるようになり、低い設計引張強度によって対策工の諸元が決定されるケースが生じてきている。以上の背景のもとで、砂質地盤の液状化対策として固化処理工法を適用した場合の設計を合理化するために、改良地盤に作用する引張応力と、これに抵抗する引張強度を精度よく評価する手法を確立することを目的として本研究を実施している。初年度である今年度は以下の検討を実施した。1.三軸引張試験装置の製作側方から拘束圧を加え、かつメンブレンで密閉して排水条件を制御しながら、軸方向に引張力を作用させて引張強度を測定する三軸セルを新規製作した。引張荷重が偏心すると供試体に曲げモーメントが作用して実験値がばらつくため、曲げモーメントが作用しないようにユニバーサルジョイントを介して載荷を行うものとした。2.室内配合した固化処理土の引張強度特性に関する室内試験室内で砂とセメント(固化材)およびベントナイト(分散防止剤)を混合し、高さ10cm,直径5cmの円筒供試体を作成した。その割裂試験と三軸引張試験を実施して、得られた引張強度は後者のほうが大きいことを明らかにした。さらに、三軸引張試験では、排水条件、拘束圧、および載荷速度を変えた試験を実施し、これらの要因の影響を明らかにした。
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