液状化対策としての地盤固化処理工法の設計合理化に関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13555136
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 古関 潤一 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (30272511)
• 研究分担者: 早野 公敏 独立行政法人港湾空港技術研究所, 地盤改良研究室, 研究官 ; 佐藤 剛司 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (30092224) ; 龍岡 文夫 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (70111565) ; 松尾 修 国土交通省, 国士技術政策総合研究所・危機管理技術研究センター, 地震災害研究官 ; 舘山 勝 財団法人鉄道総合技術研究所, 構造物技術研究部, 研究室長
• キーワード: 液状化対策 / セメント改良 / 砂 / 三軸試験 / 割裂試験 / 引張強度 / 耐震設計 / 固化処理

研究概要

地震時の砂質地盤の液状化に起因する被害を防ぐために、セメント系固化材と原位置の土を地中で撹拌混合して固化させる地盤改良工法の適用例が近年増加している。このような固化処理工法による改良地盤は高いせん断強度と剛性を有するが、砂のような粒状体材料が母材であるために引張強度は必ずしも高くはない。これまでは、既往の室内試験結果に基づいて一軸圧縮強度の15%程度が引張強度の設計値として用いられてきた。しかしながら、兵庫県南部地震以降は、稀に発生するような大規模な地震を想定した設計も実施されるようになり、低い設計引張強度によって対策工の諸元が決定されるケースが生じてきている。
以上の背景のもとで、砂質地盤の液状化対策として固化処理工法を適用した場合の設計を合理化するために、改良地盤に作用する引張応力と、これに抵抗する引張強度を精度よく評価する手法を確立することを主な目的として本研究を実施した。最終年度である今年度は、軸方向の角度を変えた供試体を用いて強度特性の異方性を調べる方法を新たに開発し、室内で締固めて作製したセメント改良砂を対象に、一軸圧縮・引張試験と割裂試験を行った。その結果、割裂強度は供試体軸方向の角度に依存する傾向が見られるものの、一軸引張強度と圧縮強度には明確な異方性は見られないことを明らかにした。また、初期中間主応力の大きさを変化させながら平面ひずみ状態で圧縮試験を行い、平面ひずみ条件では三軸条件に比較して最大軸差応力が1.2倍程度となること、および、中間主応力ではなく変形拘束条件がセメント改良砂のせん断強度に大きな影響を与えることを明らかにした。さらに、セメント改良土の強度発現特性に関する基礎的な研究に着手し、セメント混合粘土を用いた三軸排水試験で得られたピーク強度は初期間隙比が小さいほど大きくなり、養生中の偏差応力の影響はほとんど見られないことを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Salas-Monge, R., Koseki, J., Sato, T.: "Cyclic plane strain compression tests on cement treated sand"Bulletine of ERS. No.36. 131-141 (2003)
• [文献書誌] 古関潤一, Salas-Monge, R., 佐藤剛司: "繰返し載荷がセメント改良砂の強度変形特性に及ぼす影響"生産研究. 55巻6号. 75-78 (2003)
• [文献書誌] Koseki, J., Salas-Monge, R., Sato, T.: "Plane strain compression tests on cement-treated sands"Proc.of First Japan-U.S.Workshop on Testing, Modeling, and Simulation in Geomechanics. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 西本亨, 古関潤一, 佐藤剛司: "締め固めて作製したセメント改良砂の引張強度特性の異方性"土木学会59回年次学術講演会第3部門. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 並河努, 鈴木吉夫, 古関潤一: "セメント改良砂のせん断強度に関する平面ひずみ圧縮試験"第39回地盤工学研究発表会講演概要集. (印刷中). (2004)
• [文献書誌] 甲元信宏, 岡弘和, 龍岡文夫, 古関潤一, 佐藤剛司: "セメント混合粘土の変形強度特性"第39回地盤工学研究発表会講演概要集. (印刷中). (2004)