研究概要 |
1.北海道北西部に位置する群別川(流域面積33.9km^2,流路長15.7km,勾配1/50〜1/15)下流1km区間を調査区間に選び,地形,礫列細部構造,魚類生息状態を調べた. 2.河床地形,河床表層砂礫粒径,水深,流速(各1mメッシュ)調査の結果,以下の成果を得た. (1)群別川当該区間には,平均半波長100mの交互砂州(砂礫堆)が発達している.砂州前縁に向かう流れの転向部が河川生態学上の早瀬に,深掘れ部が淵に,それに続く砂州前縁に沿う流れが平瀬に対応している. (2)線格子法によって得た河床表層砂礫の粒径は,流下距離に対して平均60m程度の周期変化を示す.これにより縦断分級波の存在を確認した.また,砂礫の個数粒度分布は対数正規分布に一致し,重量粒度分布はタルボット分布に近づく.これらは,従来の知見と一致する. (3)交互砂州上に形成されている礫列は,平均波長7.6m,平均波高0.3mほどである.これらの値は既往の理論式に一致する.また,早瀬から淵に向かう流れの転向部で顕著に発達し,波高の大きい礫列が数段続く. 3.細部構造調査のために3ヶ所の発達した礫列を選び,横断測量・平面写真測量・礫径測定を実施して以下の成果を得た. (1)平面図,および隣りあう礫列構成礫の関連図から,(1)比較的一様な径をもつ礫群から構成され,礫列峰線が直線状で低波高の形態,(2)大小さまざまな異粒径礫群からなり,礫列峰線が複雑な円弧の連なりを示す形態,(3)比較的大きな礫径をもつ多層の礫群からなり,礫列峰線が単純な円弧の連なりを示す大波高の形態を見出した. (2)上記(2),(3)の礫列群に対してバリオグラム解析を施し,(2)は空間的に一様な粒径分散を有すること,(3)は周期的粒径分散を有することを明らかにした.後者は,構造の中に高モードの礫段を含んでいること示す. (3)魚道への応用を意図した場合,(1)は一般的で施工もしやすいが,波高が低くプール部が浅い.一方,(3)は特殊な場所に見られ,この形態による方法は自然の流況をもたらさない.しかし,深いプールが保証される.対象とする魚種によって使い分けるべきことが示された. 4.潜水およびタモ網,仕切り網,エレクトロフィッシャーによる魚類調査(4回)によって,以下の成果を得た. (1)群別川調査区間では,合計採捕尾数のうち72%をシマウキゴリが,26%をサクラマスが占めていた. (2)底生性魚類であるシマウキゴリは,早瀬や平瀬に多く分布する傾向が認められる.また,遊泳魚であるサクラマスは,地形区分による分布の違いが認められない.
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