研究概要 |
山地渓流には礫列(リブ)や礫段(ステップ・プール)などの階段状の河床地形が発達している.本研究の目的は,これらの地形を模した新しいタイプの渓流型魚道の設計法を明らかにすることである.今年度は引き続き群別川を対象にし,昨年度成果のステップ詳細構造をもとに流れの巨視的ならびに微視的水理形態区分をおこない,それぞれの対象地点における流速・水深・水温・溶存酸素濃度・礫径などの微環境計測を実施するとともに,底生生物(おもに水生昆虫)のネット採取(8117匹)をおこなって両者の関係を調査した.得られた成果は以下である. 1.群別川のような渓流の水温・溶存酸素濃度は,河床地形や水理形態にほとんど関係しておらずほぼ一定である.2.礫段型河床地形の方が礫列型河床地形よりも流速分布の多様性に富んでいる.3.ステップ礫表面流速と礫径の間に明瞭な正の相関が認められる.4.礫段型河床地形の方が礫列型河床地形よりも底生成物の総個体数・単位面積あたり個体数(生息密度)が多い(高い).しかし,種数では逆である.5.射流・跳水・常流の区域比較ではこの順に生息密度が低くなっているが,単位面積あたり種数では常流域が多い.6.ステップ上流部・同頂部・同下流部での比較ではこの順に生息密度が低くなっているが,単位面積あたり種数では下流域が多い.7.流速の大きい場所ではウエノヒラタカゲロウ・フタバコカゲロウが優勢種であり,小さい場所ではエルモンヒラタカゲロウ・シロハラコカゲロウ優勢種になっている.8.流速の大きいステップ上流部や頂部で個体数が多く生息密度が高い理由は,同所の礫径が大きく生息表面積が大きいこと,餌となる有機物が滞留しやすいことによる.9.しかし,高流速域にとどまることができる種は限定されるため,種数は減少する結果となる.10.以上から微環境に対応した底生成物の棲み分けが認められる.
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