研究概要 |
本研究は波浪情報を高精度・高解像度で提供できる開境界適応型大気・海洋結合波浪推算手法の開発を目的とするものである.本年度得られた主要な成果を以下に列記する. 1.風から波へのエネルギー伝達過程の解明 LDVおよびPIVによって風波下の水粒子速度場の計測を行い,白波砕波によって水面下に強い乱流境界層が生成され,そこでのエネルギー散逸率の増大と風から波へのエネルギー伝達量の増大が密接にかかわっていることを明らかにした. 2.波浪推算モデルにおけるエネルギー流入項と損失項の実験的検討 風洞水槽実験によって風波スペクトルの発達過程に対する波浪推算モデル(SWAN)の精度検証を行い,砕波を介したエネルギー流入項および損失項だけでなく,スペクトル成分間のエネルギー輸送を担う非線形干渉項にも精度的に問題があり,これら3つの項の整合性を保ちつつモデルの改良を行う必要があることを示した. 3.局地気象モデルによる海上風算出 局地気象モデルとしてMM5を用いて2001年3月の1ヶ月間の伊勢湾内海上風の再現計算を行い,海洋タワー(中部国際空港)での風速・風向データと比較し,このモデルによって陸地の影響を強く受ける内湾海上風の算出が実用レベルで十分に可能となることを実証した. 4.海上風と風波を結合させた波浪推算 1999年〜2000年の2年間を対象として局地気象モデルによって東京湾の海上風を計算するとともに,波浪モデルWAMおよびSWANに結合させて,内湾波浪の推算を行い,高風速時を除けば実用精度の結果が得られることを示した.
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