| 研究概要 |
本研究は波浪情報を高精度・高解像度で提供できる開境界適応型大気・海洋結合波浪推算手法の開発を目的とするものである.本年度得られた主要な結果を以下に明記する.
1.白波のエネルギー伝達過程に及ぼす影響を評価したエネルギー流入項と損失項の定式化
風から波へのエネルギー伝達過程に白波砕波の影響を反映させるため,エネルギー流入・損失項にSnyderらの理論およびJannssenの理論を導入した.その結果,後者は流入を過小評価し,損失を過大評価するが,前者によって白波の影響を精度良く評価できることが確認できた.
2.日本周辺全域での波浪追算精度の検証
日本周辺任意地点での波浪追算精度の向上のため,各地点での観測データに同化させるAdjoint WAMの開発を行った.方向スペクトルの第1推定値を同化変数とし,評価関数に観測誤差項と背景誤差項の両方を考慮することにより,日本周辺全域において推算精度が向上することが示された.
3.海上風と風波を結合させた波浪推算手法
海上風を気象モデルMM5によって計算し,外洋波浪をSWANでそれぞれ計算する結合モデルを開発して伊勢湾内の波浪追算を行った.その結果を中部国際空港観測塔の波浪データと比較し,格子間隔を200m程度まで細密化することによって,空港島や海底地形の影響も含めて多様な気象場での波浪の高精度再現が可能となることを実証した.
同様な波浪推算を1999年〜2000年の2年間にわたって東京湾においても実施し,結合モデルによって任意の内湾に対して実用レベルでの波浪推算が可能となることを実証した.
4局地気象モデルによる海上風算出
局地気象モデルとしてMM5を用い,鉛直20層の水平解像度1km格子で2001年度1年間の伊勢湾海上風の再現計算を行った.その結果を中部国際空港の海洋観測塔の風速・風向データと比較し,このモデルによって外洋海上風だけでなく陸地の影響を強く受ける内湾海上風の算出が実用レベルで十分に可能となることを実証した.
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