研究概要 |
本年度は,従来から研究蓄積のある一時停止を伴う幹線道路合流部を対象に,交通安全対策の策定に資するドライバーの判断プロセスモデルの考え方を整理し,特にITS技術に着目した安全性向上の把握方法の基礎的な調査を行った. はじめに,一時停止を伴う合流部における交通特性を整理し,合流車の流入判断プロセスが主問題であることを認識し,認知するギャップの時間間隔と「判断時間」,「最小操作時間」,「余裕時間」の大小関係で流入判断を行う基礎的なモデルを提案した後に、交通安全対策の要点を,上記の流入判断プロセスにおける判断要因の変動を小さくすることと捉え,複数の合流部交通安全対策が判断要因に与える影響を整理した.合流部の交通安全対策の中で走行支援情報提供に着目し,安全性を高めるための情報提供方法・内容などを検討した. 以上の議論を踏まえ,ある幹線道路合流部を対象に,ハンズフリーの携帯電話による簡易な合流支援情報提供システムの模擬実験を実施した.固定点から合流部の交通流を撮影するビデオ画像、および実験車両に搭載されている被験者の運転操作などを撮影するビデオ画像から,合流時に関連した本線車の位置,アクセルワークや視線の動きなどの運転操作データに関する詳細なコーディングデータの整備を行っている. 以上のデータを用いて,通常時の走行特性を把握した上で,情報提供が合流判断に及ぼすに与える影響を分析した.その結果,比較的長めの検査区間を取った情報提供により,より安全なギャップへの合流へ誘導する可能性はあること,また,短めの検査区間でも,合流時の加速度の変動を小さくする効果が見られたこと,情報内容と被験者の判断が一致すれば判断時間を短くできること,情報提供のタイミングが悪ければドライバーが合流を躊躇してしまうことがあること,情報提供がより安全性の高い合流をもたらす可能性があることなどが分かった.
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