研究概要 |
病原ウイルスに対する吸着親和性の高いタンパク質(ウイルス吸着タンパク質:Virus-Binding Protein, VBP)を活性汚泥中から分離し,このVBPを用いた下水処理水からの病原ウイルス除去技術を実用化することが本研究の目的であった.平成13年度には,活性汚泥細菌からポリオウイルス1型(PV1)に対するVBPをアフィニティクロマトグラフィにより分離することに成功し,さらに平成14年度には,活性汚泥からのVBP遺伝子分離およびVBPクローニングシステムの構築に成功した.本年度はVBP固定化技術開発及びPV1吸着実験を行い,以下に述べる成果を得た. まず,担体として用いるガラスビーズ表面上へのVBP固定化手法を構築した.硫酸酸性過酸化水素水(Piranha溶液)でよく洗浄したガラスビーズ表面上をアミノシラン(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)で修飾し.さらにグルタルアルデヒドを導入した.その次にVBPを導入することで,VBP間の架橋を防ぎつつ,ガラスビーズ表面からVBPまでを共有結合で強固に結合することが可能である.本手法により,VBPがガラス粒子表面上に確かに導入されたことをELSIAによって確認した. さらに,ガラス粒子表面上におけるVBPの配向固定化を実現するため,VBPのC末端にポリリジンタグを導入したLysTag-VBPの合成を試みた.ポリリジンタグ導入用のプライマーを設計し,PCR反応によりLysTag-VBP遺伝子を創出した.このLysTag-VBP遺伝子を組み込んだプラスミドpRSETを大腸菌に導入して培養したところ,LysTag-VBPを効率的に合成することに成功した.上述の固定化手法を用いてガラスビーズ表面上にLysTag-VBPを固定化し,固定化されたLysTag-VBPを用いてポリオウイルス1型吸着実験を行ったところ,固定化Lystag-VBPとポリオウイルス1型間の結合が親和性の高いものであることが確認され,本技術を利用した水中病原ウイルス除去技術が実現可能であることが示された.
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