研究概要 |
1 現場調査による長期間連続測定とSS流出挙動モデルの構築と検証 茨城県牛久市の分流式下水道排水区を対象とし,平成11年度の現場調査データ(降雨および雨水管内水位の連続データとSS濃度)を元に,汚濁物質の挙動の解析を行った。解析により得られた主たる結論は以下のとおりである。 1)雨水流出量と時間的な変動も考慮した解析を行う場合,不浸透面として,その流出特性が異なる屋根と道路を区別して取り扱う必要がある。すなわち,有効降雨モデルにおいては,屋根を直接流出域,道路は0.5mm程度の初期損失があるとし,地表面流出モデルにおける貯留係数を与える場合に,屋根の方が道路より雨水の流出が早いと仮定することにより再現性が向上した。 2)Sartor/Boydモデルを用いた汚濁解析では,屋根と道路を一括して不浸透域と捉えた場合にはSS流出の時間的変動を再現できなかったが、道路における限界掃流量という概念の導入により再現可能となった。 3)汚濁解析前後の物質収支計算より,先行降雨終了時の道路残存SS堆積量の評価が重要であることが示された。 2 雨水流出解析への土地利用デジタルデータの活用 細密数値情報にもとづく流出特性パラメータ値の決定と,その適用の問題点を明らかにした。検証には既存の雨天時流出量調査データ(名古屋,大阪,京都)を用いた。流出特性パラメータを決定する簡便な方法として,不浸透域を屋根と道路に分け,浸透域と合わせて3種類の工種を設定した。それぞれの工種について初期損失と浸透能を定義し,細密数値情報における土地利用分類(17分類)ごとにこれら3工種の割合を与えることにより,名古屋,大阪での雨水流出パターンを表現することができた。また,細密数値情報における「その他の公共公益施設用地」分類に比較的広い鉄道用地が含まれているような特殊な場合には,異なる工種割合の設定が必要であることが分かった。
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