研究概要 |
汚濁負荷流出解析の高度化をはかり,屋根と道路を区別したノンポイント汚濁負荷量の分布型モデルによる評価手法を確立した. 1.汚濁負荷モデルの構築と検証 長期間におけるすべての降雨を表現できるようなシステムを構築するために,分流式下水道地域での観測データ(雨量,水位,SS実測データ)を用いて,不浸透面を屋根と道路に分割したモデルの検討を行った.SSの評価という点で,全量ではなく1.2〜45μmと45μm〜2mmの二つのサイズに分画し,それぞれの流出挙動を調べ,再現可能なモデルの構築を行った。特に微量汚染物質の挙動と密接に関連する微粒子画分に着目し,その流出挙動をSartor and Boyd改良モデルを用いて表現し,屋根と道路の負荷流出係数kをそれぞれ1.0,0.2(mm^<-1>),限界掃流量Rcをそれぞれ0.5,1.0(mm/hr)と設定することで,連続的な7降雨に対して実測値に合う計算結果を得ることができた. 2.堆積物中の微量汚染物質の特性評価 1.に示したように不浸透面堆積物の粒径に着目し,そこに付着する多環芳香族炭化水素類(PAHs)の分析を行った。クラスター解析により,ある狭い区域における道路堆積物と屋根堆積物のPAHs組成には違いが見出されたが,都心部と郊外部との比較のように道路交通以外の負荷が異なる地域を比較する際には,道路と屋根との違いよりも,地域の違いの方が大きかった。 3.浸透面由来のSSの挙動モデル 1.の解析は比較的降雨強度の小さい降雨に対して行った解析であり,降雨強度が大きい場合にはモデル計算値は実測よりも小さくなった.これには浸透面由来のSS流出が寄与していると考えられ,そこで,Sartor and Boyd改良モデルにさらに流出項を追加し,浸透域流出モデル,道路植樹帯流出モデルを検討した.再現性の向上は見られたものの,パラメータ設定に課題が残された.
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