研究概要 |
スタジアムとして用いられるケーブル補強大スパン骨組構造物に対して,完成形状での種々の載荷条件の下での制約を考慮して,最適なケーブル張力及びケーブル配置を求める手法を提案した。さらに,完成形状からの逆施工解析によって,施工中の制約を考慮した張力導入手法を開発した。本年度の主な成果は下記のとおりである。 1.完成時における自重・積載荷重などの長期荷重及び,地震荷重や風荷重などの短期荷重作用時の骨組の変位・応力及びケーブルの張力に関する制約を考慮して,張力の偏差量,最大値などの性能指標を最小化するような最適張力を求める手法を提案した。 2.施工過程を完成状態から逆に追跡することにより,施工時の骨組の応力とひずみに関する制約を考慮して,施工順序(ケーブル張力導入及びベント除去の順序)を最適化するための近似的手法を提案した。 3.張力導入順序決定問題を一つのスケジューリング問題と考え,動的計画法を用いて全工程を通じての張力総導入量及びジャッキ容量によって定まる施工エネルギーを最小化するような施工順序を求める手法を提案した。さらに,実用規模のケーブル補強骨組に対して,本手法で得られた厳密解と2の手法で求めた近似解を精度と計算量の面で比較し,近似手法によって十分な精度の解を少ない計算量で求めることが可能であることを示した。 4.以上の成果を統合して,最適化プログラムを作成し,種々の形状のスタジアム型ケーブル補強骨組の最適ケーブル張力,ケーブル配置と最適施工順序を求め,完成状態でのケーブル配置,張力導入とベント除去順序の一般的傾向について考察した。 5.本手法を,より複雑な形式を有するケーブル構造物に拡張するため,2次錐計画法によってケーブルネットの釣り合い形状を求める手法を提案した。
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