研究概要 |
研究3年目(研究最終年度)となる2003年度は,応急補強前後の残存・修復軸耐力を確認し,プレストレス導入の有効性を明らかにするために水平加力実験を3体行い,さらに、アラミド繊維ベルトを外帯筋状に巻き付け,プレストレスを導入した無筋コンクリート柱の中心圧縮実験を27体行った。 正負繰り返し水平加力実験により,アラミド繊維ベルトによる応急補強法は柱の水平耐力と靭性の回復に有効であり,アラミド繊維ベルトに緊張力を導入すればさらに効果的であることが確認された。また,応急補強前後の残存・修復軸耐力実験により,補修前の柱のコンクリート強度は損傷程度にも依存するが,シリンダー強度の0.3倍から0.6倍であること,さらに鋼板やアングルなどを下地材にアラミド繊維ベルトで応急補強し,緊張力を導入すれば柱としての軸耐力は,シリンダー強度を確保できそうであることが確認された。アラミド繊維ベルトにプレストレスを導入した耐震補強法は,特に地震被災後の損傷したRC柱の応急補強に効果的であることが明らかになった。 中心圧縮実験では,プレストレス導入に伴い圧縮強度,圧縮靭性能が共に改善されることが確認されたが,一方でプレーンコンクリートからの強度上昇率には,上限が存在することも明らかになった。つまり,能動的横拘束効果には限界が存在するということである。この新知見は,アラミド繊維ベルトで横補強された拘束コンクリート柱の構成則に影響を及ぼすので,科研終了後もさらに検証実験を行う予定である。また,今回の中心圧縮実験結果を用いて,既存の応力とひずみ関係式であるMander式と崎野・孫式を修正した結果,両式ともプレストレスを導入した試験体については,良好に実験結果を追跡できるようになった。なお、これらの研究成果は報告書として、近く取りまとめる予定である。
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