研究概要 |
前年度までの成果により、La(Fe_xSi_<1-x>)_<13>化合物における、水素吸収によるキュリー温度制御により、室温でメタ磁性転移に伴う巨大磁歪を発現させることが可能であることが確認された。 本年度はさらに以下の項目について検討を行った。 1.巨大磁歪の等方性の確認 従来の異方的線磁歪を応用した材料では得られない等方性磁歪特性を確認するために、磁場中X線回折測定を行った。遍歴電子メタ磁性転移は3dバンド構造に由来した現象であるため、転移に伴う磁気体積効果は等方的であることが予想される。粉末X線回折において散乱ベクトルと垂直に磁場を印加した測定を行い、結晶対称性の転移前後の変化の確認と格子定数の磁場依存性を調べた。強磁場印加によりメタ磁性転移後の強磁性相における結晶対称性は転移前と同様であることが確認された。また、格子定数の相対変化の磁場依存性は、磁場と平行方向に測定したバルク試料の縦磁歪と、大きさおよび変化の様子において一致した。すなわち本化合物のメタ磁性転移に伴う磁気体積効果は等方的であり、約1.2%程度の体積変化を生じることが確認された。 2.転移磁場の温度依存性の検討 遍歴電子メタ磁性転移の転移磁場は温度上昇により増加するため、一定磁場下で磁歪特性を得る場合には、上限温度が限定される。一方、La(Fe_xAl_<1-x>)_<13>化合物が示す反強磁性-強磁性転移転移においては、体積変化は比較的小さいが、転移磁場の温度依存性が小さいことが明らかになった。A1系における転移磁場の温度変化の特徴を検討した結果、スピンの揺らぎおよび磁気体積効果が本化合物系の転移磁場の温度依存性に強く影響することがわかった。これらの結果より、La(Fe_xM_<1-x>)_<13>(M=A1,Si)化合物において転移磁場制御の方針が得られた。 以上より、メタ磁性転移を示すLa(Fe_xM_<1-x>)_<13>(M=A1,Si)化合物は、等方性巨大磁歪を示す新しい磁歪材料として有望である。
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