研究概要 |
薄膜形態の強誘電体は、電源を切ってもデータが保持できる不揮発性高速メモリであるFeRAMやマイクロマシン用のアクチュエータ等の有望な市場が期待され、多様な製品の量産化は確実である。これには現在Pb(Zr, Ti)O_3を中心にした鉛系材料が検討されているが、その使用量の増加に伴い、鉛の環境中への拡散に対する危険性は大きな社会問題となることが懸念される。さらに薄膜作成法として大量生産が予想される実用プロセスのMOCVD法では、強い毒牲が知られ、ガソリンでは非常に厳しく規制されている四エチル鉛をPb原料として使用することが検討されている。それゆえ鉛系材料が今以上に広く市場に出回る前に非鉛系の代替材料を探索することは急務である。 本研究の目的は、環境低負荷型の非鉛系強誘電体材料であるBi層状強誘電体の中でも、低温で大きな特性を発現することが明らかになったBi_4Ti_3O_<12>基での新規強誘電体膜を探索することである。特に低い合成温度で特性発現可能な物質を探索することにより、今後重要となるSi基板上への集積をも可能とする非鉛系新材料の開発を目指す。 本年度は主にMOCVD法で高品質なエピタキシャル薄膜を作製することで、大きな強誘電性を発現する組成探索を行なった。その結果、以下の結果を得た。 1)Vはエピタキシャル薄膜においては残留分極値には大きな影響を及ぼさず、抗電界がわずかに減少するのみであることが明らかになった。 2)ランタノイド元素は逆に抗電界にはほとんど影響を及ぼさないのに対し、残留分極地のみに大きく影響を及ぼすころがわかった。 3)残留分極値はランタノイド元素の種類によって異なり、検討した元素に開しては、Nd>Sm>Laの順ととなった。 4)特にNdでは25μC/Cm^2を上回る残留分極値が得られ、鉛系の強誘電体物質の代表物質であるPb(Zr, Ti)O_3の強誘電性に匹敵する値が得られることがわかった。
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