研究概要 |
火力発電プラントなどの高温高圧機器に使う材料には,安全率を低減し,より厳しい条件で使うこと(限界設計)が望まれている。限界設計では,破損の危険が増し,より高度なリスク(事故)回避技術が不可欠となる。本年度は,安全率を大きく取らなければならない材料性能のばらつきの原因を,316鋼NIMSクリープデータを例として検討し,以下の成果を得た。 1.長時間挙動の外挿精度:短時間試験結果を外挿して長時間挙動を予測する際に最も問題となるのは,クリープ破断時間の温度依存性が変化することである。9ヒートの鋼全てで,活性化エネルギーの変化する複数の領域が確認された。そして,この領域の変化は,破壊機構変化と対応することが明らかになった。なお,この活性化エネルギー変化を無視する従来の解析手法では,材料性能を過大評価することになる。 2.材料間差:長時間側で,粒界脆性破壊のために,クリープ強度が低下する。この脆化は,σ相の粒界析出と関係し,材料毎にσ相の析出速度が異なる。そのため,各材料のクリープ強度は,特に低応力・長時間側で顕著な差を示す。なお,この材料間差を無視して複数ヒートのデータを纏めて解析すると,弱い材料の長時間性能を過大評価することになる。 3.材料性能のばらつきに対する各因子の寄与:材料性能のばらつきを生む種々の原因を検討した結果,ヒート間差,外挿に伴う誤差と材料性能本来の不確実性が,それぞれ3:3:2の割合で寄与していることが分かった。
|