研究概要 |
火力発電プラントなどの高温高圧機器に使う材料には,安全率を低減し,より厳しい条件で使うこと(限界設計)が望まれている。限界設計では,破損の危険が増し,より高度なリスク(事故)回避技術が不可欠となる。本年度は,安全率を大きく取らなければならない原因の1つである先進高Crフェライト鋼の長時間での強度低下の原因を検討し,以下の成果を得た。 1)先進高Crフェライト鋼では、長時間側で、破断時間の活性化エネルギーが低下する。そのため、短時間側の大きな活性化エネルギーを使って予測した値に比べて、実際の材料は早期破断することがある。そして、この活性化エネルギー変化の原因を解明することが、長時間挙動推定の精度向上に不可欠である。 2)本材料は、短時間側では粒内破壊し、大きな延性を示す。これに対して、長時間側では、粒界破壊へ遷移し、小さいひずみ量で脆性的に破壊する。この破断ひずみの低下が、見かけの活性化エネルギーの低下と早期破断の原因である。 3)W含有高Crフェライト鋼では,粒界部にLaves相が析出し,粗大化する。粒界破壊はこのLaves相析出物を起点として発生する。そして,Laves相が十分な大きさに成長することが早期破断開始の目安となる。 4)本材料の長時間強度の推定精度を向上させ,限界設計を可能にするには,Laves相の成長,粒界ボイドの発生・成長等に関するデータベースを整備し,クリープ挙動変化を事前に予期できるようにしておく必要がある。
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