研究概要 |
火力発電プラントなどの高温高圧機器に使う材料には,安全率を低減し,より厳しい条件で使うこと(限界設計)が望まれている。限界設計では,破損の危険が増し,より高度なリスク(事故)回避技術が不可欠となる。本年度は,安全率を大きく取らなければならない原因の1つである先進高Crフェライト鋼のタイプIVの原因を検討し,以下の成果を得た。 1.タイプIV破壊は低応力・長時間クリープ条件で出現する。タイプIV破壊の発生にともなって,延性が低下し,クリープ破断時の断面収縮率は10%程度となる。この条件での溶接継手のクリープ破断時間は,母材に比べて1桁程度短くなる。 2.クリープキャビティは粗大なM_<23>C_6炭化物粒子と母相の界面に発生し,結晶粒界に沿って成長する。このキャビティはクリープ変形に誘起されて成長する。 3.Intercritical(IC)HAZ部は,AC_1とAC_3温度の間のα+γ2相域に加熱される。このICHAZでは,炭化物固溶度の低いフェライト(α)粒が多く残っており,しかも高温に加熱されるため,溶接時にM_<23>C_6粒子が最も早く粗大化する。しかもICHAZ部は結晶粒径が小さく,クリープ変形抵抗が低く,他の部分より大きなひずみが蓄積される。 4.上記の原因により,タイプIVクリープ破壊はICHAZ部に発生し,クリープキャビティを連結しながらICHAZ部を成長する。 5.タイプIV破壊の予知や抑制には,M_<23>C_6炭化物の成長に注目する必要がある。
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