研究課題
水素吸蔵合金は水素を標準状態の10^<-3>の体積で貯蔵することができ高い安全性をもつことから、自動車用エネルギーストレージ材料として考えられている。自動車向けとしての問題点は、重量あたりの貯蔵量が小さいことである。例えば、希土類系合金では、1wt.%程度の水素貯蔵量しかない。経済産業省のWE-NET計画では、吸蔵量の目標値が3wt.%に設定されている。炭素系材料はその目標値をクリアするにふさわしい材料である。今年度は窒化炭素構造制御技術を基に、1)メゾスコピックレベルで制御された高効率水素吸蔵窒化炭素の開発、2)ウイスカー型水素吸蔵構造体の合成、および3)水素ストレージ実証試験を小規模スケールで行ない、窒化炭素高効率水素吸蔵構造素材のエネルギーストレージとしての基礎検証を行なった。電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ化学気相析出(CVD)装置により窒化炭素のメゾスコピック構造を制御した窒化炭素をアセトニトリルやその他ニトリル化合物より作製したところ、数時間で0.5g程度の試料が得られた。作製された窒化炭素に12MPaの水素加圧処理を行ったところ、最大0.5wt%の水素吸蔵が確認された。その構造を顕微ラマン散乱分光装置、赤外線吸収分光装置およびX線回折装置で確認したところ、水素の吸収により窒化炭素ネットワークの骨格構造がわずかに広がっていることがわかった。また終端構造にはなんら変化がないことがわかった。静電加速器によるα線照射をおこなって水素定量したところ、最大で35at%の水素が窒化炭素試料中に含まれていることがわかった。