研究概要 |
1.ナノ結晶Fe-M-B(M=Zr,Hf,Nb)合金よりM元素としてNbを選択し、更にNb濃度を6.5at%以下とすることにより、大気中での薄帯作製が可能であることを確認した。 2.大気中で作製できる高Fe濃度Fe-Nb-B合金では薄帯作製時にアモルファス相中に粗大なα-Fe相が析出するため熱処理後に均一なナノ結晶組織が得られず、軟磁気特性が劣化することが明らかになった。 3.Fe-Nb-B合金のBをPで1at%程度置換することにより、非晶質形成の限界近傍の高Fe濃度組成で軟磁気特性の向上が確認され、これにより大気中での薄帯作製が可能で、かつ高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を兼備した合金の開発が可能であることを確認した。 4.高Fe濃度Fe-Nb-B-P合金に更にCuを0.1at%程度添加することにより、薄帯作製時にアモルファス相中に析出するα-Fe相を数nmまで微細化でき、結晶化後に優れた軟磁気特性を実現できることを確認した。 5.以上の成果から、大気中での薄帯作製が可能で、かつ1.61Tの高飽和磁束密度、41,000(1kHz)の高透磁率、0.11W/kg(50Hz,1.4T)の低鉄損を兼備したFe_<84.9>Nb_6B_8P_1Cu_<0.1>合金を見出した。本合金の磁気特性は、従来のアモルファス単相薄帯を結晶化させて得られるものと遜色なく、液体急冷組織中のナノスケールまで微細化されたα-Feは、ナノ結晶化組織の均一性を害さず、軟磁気特性劣化の要因にはならないことが確認された。
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