研究概要 |
本年度はパルス通電加圧焼結(PCPS)法を難焼結性のAl合金の焼結に適用することを試みた. 製造法が異なる2種類のアルミニウム粉末をPCPS焼結し,HP焼結体との組織,機械的性質の違いを明らかにすることにより,次の結果を得た. (1)吸着水をその酸化皮膜中に多く含む水アトマイズ粉末のPCPS焼結では,吸着水とAlの反応によって生成する水素を比較的短時間で排出することができる.また,PCPS焼結体では酸化物が多く生成されるが,不定形状である水アトマイズ粉末では粒子のせん断変形により酸化皮膜が粒状にまで破壊されるので,その引張強さの最高値はHP焼結体に比べてむしろ若干高い値を示した. (2)AlのPCPS焼結では,酸化皮膜が破壊されている金属接触部で発生するジュール熱が接触部の数に大きく影響される.1パルスの電流で上昇する温度を概算すると,粉末界面の金属接触部における温度上昇量は700〜2700K程度となり,パルス通電による電気エネルギーがAl粉末の焼結に大きな役割を果たしていることが明らかになった. (3)出発原料のAl-8%Ni-2%Mn-1%Cu-0.8%Zr-0.7%Ti-0.25%Mg合金粉末は過飽和固溶体とAl-Al_3Ni共晶からなる.730K以上で焼結した場合,旧粉末境界にAl_3Ni相が析出した.焼結温度の上昇と共にこの析出相が増加すると,焼結体の硬さは低下した.最高硬さはHV200でであり,このときAlマトリックス中には3at%のNiが過飽和に固溶していた. (4)焼結体の引張強さと粒子間結合の障害となる水素の関係を検討した.粉末表面の吸着水分を効果的に除去できる焼結プロセスを導入することにより,焼結体中の水素量は60ppmから20ppmまで減少した.引張強さは脱ガス工程を経て押出しされた焼結体に匹敵する500MPaにまで改善することができた.
|