研究概要 |
アルミニウムは軽量で耐食性,成形性が良く,また電気伝導度が良いなどの優れた多くの性質をもつが、耐食性は期待できない。アルミニウムの耐熱性を向上させる手法のひとつとしてアルミナなどのセラミックスとの接合が考えられるが,両者の大きな熱膨張率の差が接合の障壁となる。そこで,この間の組成,組織の分布を連続的に制御し熱応力緩和型の傾斜機能材料(Functionally Graded Materials, FGM)にすることが有効である。焼結緻密化温度約870Kのアルミニウム粉末と約1800KのAl(OH)3粉末の一体焼結によって得られるAl/Al203系傾斜機能材料の試作を試みた。この研究ではAl203層の高密度化と高硬度化を目的とするものである。まず,Al(OH)3の変態により生成する最終安定相α-Al203への変態温度を種粒子を添加することにより低温側へシフトさせるシーディング法を採用した。そして,焼結工程においてセラミックス側がより高温になるよう温度傾斜PCPS法を試みた。本研究ではアルミニウムおよびAl(OH)3粉末を出発原料とし,銅板を用いた温度傾斜PCPS法によって49MPaの加圧下,900secの短時間焼結で緻密なα-Al203層,および傾斜中間層7層から成るAl/Al203系傾斜機能材料の作製に成功した。主な結果をまとめると次のようになる。(1)銅板を用いた温度傾斜PCPS法によって,パンチ上部で約1800Kの高温に達した。また試料の最下層のアルミニウム側で約870Kとなり,両者の間に約900Kの温度差をつけることに成功した。(2)Al(OH)3粉末に微細なα-Al203粒子を20mass%シーディングすることによってα化変態温度を約300K低くすることに成功した。(3)最下層のアルミニウム単層領域の硬さは約25HVを示し,傾斜中間層内では生成したγ-Al203の体積率に伴い段階的に増加した。最上層部分は緻密なα-Al203から成るセラミックス層が生成し平均硬さ1000HV以上,試料表面では約1500HVの高硬度に達した。
|