研究概要 |
昨年度開発したパイルアップリアクターの有用性を示すため、本年度はより汎用的かつ一般的な合成反応の実施および、分離プロセスの集積化を実施した。 (1):汎用的かつ一般的な合成反応(液液界面反応) 本年度は有機合成において汎用性が高いと考えられる、炭素-炭素結合生成反応のひとつとして相間移動アルキル化反応を実施した。ここでは有機相にハロゲン化アルキルとマロン酸誘導体を溶解させ、相間移動触媒を溶解させたアルカリ性水相と接触させて合成を行った。その結果、マイクロチップ内反応はマクロスケール反応と比較して反応速度が速く、しかも多彩な反応基質に対して一般性のあることを明らかにした。 今後、本研究課題で開発したパイルアップ型化学生産システムへ適用することによって、"炭素-炭素結合を生成する"、という非常に汎用的な化学反応が大量系で実現できると考えられ,これまでのフラスコ、ビーカーを使った反応を置き換えることが可能と考えられる。 (2):分離プロセスの集積化 ここでは、マイクロチャネルの選択的化学修飾を利用して、油水分離の集積化を行った。フッ素系シラン化試薬およびポリマーを使用してマイクロチャネルを化学修飾し、有機溶媒あるいはフッ素化溶媒のみが通過・分離できるチャネルを作製した結果、水相が化学修飾チャネルに入り込み、クリアーな分離が得られない結果となった。これは化学修飾におけるフッ素系試薬を高密度に固定化できていないためと考えられる。したがって、その間題を解決するためには、ポリマーモノリス構造等を用いて表面積を増やす必要がある。そこで、現在、グリシジルメタクリレート系ポリマーモノリス構造をチャネル内に作製し、その表面をフッ素系試薬で化学修飾する実験を行い、油水分離を試みている。
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