本研究の目的は、生理活性物質や生体関連物質を内包した生分解性高分子微粒子の開発を行い、プロセス操作因子の徐放挙動への影響を系統的に行うことで徐放挙動に影響を及ぼす主因子を抽出、徐放機構を明らかにすることにある。 採用した微粒子調製法は0/0エマルションの液中乾燥法で、得られたポリ乳酸微粒子製剤の平均粒径は分散相に添加した薬物量に依存せずおよそ50μmと一定であった。一方、ポリ乳酸微粒子製剤の平均粒径に与える攪拌回転速度、分散相ポリ乳酸濃度の影響は大きく、攪拌速度の減少、分散相ポリ乳酸濃度の増加に伴い平均粒径は増加した。調製した微粒子製剤のリン酸緩衝溶液(pH7.2)中での徐放挙動を調べたところ、初期バーストは粒径に大きく依存し粒径の小さなものほど大きな初期バーストを示したが、分散相薬物量には依存せず分散相薬物量にかかわらず同程度の初期バーストを示した。また、初期バースト後の徐放速度についても、粒径に大きく依存し粒径が小さくなるに従い抑制されたが、分散相薬物量には依存せず、分散相薬物量の徐放速度に与える影響はほとんど見られなかった。 以上の実験結果を基に、水溶性薬物を内包するポリ乳酸微粒子製剤の徐放挙動に関する結果を整理可能なモデルとして、Core-Shellモデルを構築し提案した。 一方、マトリックスである生分解性高分子と薬物との間に分子間相互作用が働く場合について、その徐放挙動に与えるプロセス因子の影響を検討した。その結果、得られた微粒子の表面は分子間相互作用が無い場合に得られるような滑らかなものではなく、多数のシワ状の形態を呈した。このシワは表面積を増大させ、徐放速度を大幅に増大させ、初期バーストの原因ともなりうることを明らかにした。この結果は、微粒子製剤の調製には、高分子と薬剤との分子間相互作用の検討が必要であることを明らかにした。
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