研究概要 |
耐熱性に優れる無機膜は,高温での分離や膜型反応への応用が大きな注目を浴びている。膜型反応器とは,膜分離と触媒反応を一つのシステムにまとめたものであり,多くの反応系への応用が考えられる。本研究では,触媒層と分離膜が一体化された触媒膜に焦点を絞り,構造制御した触媒膜の開発,および,平衡シフト型反応と滞留時間制御型反応に応用し,膜反応特性の評価およびモデル化を行うことを研究目的とする。具体的には,触媒膜の構造として,分離層自体が触媒活性を有するType-a,および,触媒層と分離層が層状に存在するType-bについて,MFIゼオライト膜(Type-a),および,ゾルゲル法によりシリカ/ジルコニア系多孔性膜を製膜後(あるいは前)に触媒を含浸担持した触媒膜(Type-a, b)の2種類を開発する。 本年度は,MFIゼオライトであるZSM-5もを触媒膜とし、メタノールによるトルエンのアルキル化反応に応用した。工業的に需要の少ないトルエンを原料として,繊維原料として有用なp-キシレンへ変換する反応として期待される。平均粒子径約100nmの種結晶をαアルミナ支持体に担持し、2次成長法により膜厚10μm程度のMFI型ゼオライト薄膜(Si/Al=∞)を作製した。この膜をH型にイオン交換し、メタノールによるトルエンのアルキル化反応に応用した。トルエン/メタノール=2/1(モル比)で供給し,透過基準でWHSV=13〜47g g_<cat>^<-1>h^<-1>とした。これらの膜の2次合成液組成はSi/Al=∞であったが、支持体からアルミが溶出しMFI骨格に取り込まれ,固体酸触媒として反応性を示したと思われる。M1及びM2とも反応生成物のo-/m-/p-キシレン組成は熱力平衡組成(o-/m-/p-=24/52/24)を超えるp-キシレン選択性を示したことから、ZSM-5触媒膜の有用性が示されたと考えられる。
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