研究概要 |
本研究では,焼却対象物質が一様でなく,比較的小型の焼却炉で間欠運転を行う産業廃棄物焼却処理施設を対象として,ダイオキシン類生成の直前に薬剤(硫黄含有チタニア)を添加することにより,積極的にダイオキシン類(DXNs)の生成を抑制するシステムを構築することを目的としている。昨年度,実験室レベルでのPVC粒子を模擬ゴミとした燃焼実験により,消石灰(Ca(OH)_2)を添加することで,ある程度のDXNsの抑制効果が見られたが近い将来の更に厳しい総量規制に対して,現在検討している手法だけでは不十分であるとの結論に達した。そこで,最もDXNs濃度の高い飛灰の加熱による高効率一次処理に着目した。しかし,500℃以上で加熱処理を行おうとすると飛灰が固化してしまうため,従来の飛灰加熱処理は500℃以下の還元雰囲気で薬剤を添加して脱塩素化処理を行っている。しかし,従来法ではDXNsを脱塩素化したに過ぎず,十分な処理とは言えない。そこで,今年度は高温での固化機構を解明した上で,高温酸化処理の可能性を検討した。本研究では,固化には飛灰中の塩素が関連していると仮定し,飛灰中の塩素を高温状態で固定化できる薬剤として,水酸化ナトリウム(NaOH)を選択した。そして,飛灰とNaOH(飛灰中の塩素と等モル分)を添加し,700℃で加熱した結果固化が認められなかった。また,薬剤添加,無添加の試料を,処理前後でTG/DTA(熱重量/示差熱分析計)およびXRD(X線回折装置)で分析を行った。その結果飛灰では,消石灰と塩化水素との反応生成物として塩化カルシウム(CaCl_2)ではなく,CaCIOHのピークがXRDの分析結果から検出された。NaOH添加の加熱処理後の試料では,CaCIOHのピークが消失し,NaClのそれに代わっていた。また,無添加の試料では,TG/DTAでは800℃からの冷却時に固化を示す発熱のピークが見られたが,薬剤添加の試料ではそのピークが見られなかった。また,加熱処理前後の試料中のDXNs濃度を調べたところ,未処理が0.66ng/g-ash,400℃処理が0.17,無添加700℃処理が3.0×10^<-5>,薬剤添加700℃処理が1.2×10^<-6>となった。そのため,NaOH添加は固化防止だけでなく,DXNs分解おいてもメリットがあることが示された。
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