研究概要 |
アントラセンのビスレゾルシンを基盤とする"有機ゼオライト"の多孔性、ゲスト捕捉、触媒作用に関する研究を遂行し、以下の成果を得た。 (1)ランタン含有有機ゼオライトが水中において、カルボニル基質のエノール化を経由する様々な反応の有効な触媒になることが明らかになった。但し、ケトンのCO_2による直接カルボニル化や糖の異性化の場合には生成物がキレート効果により強い金属配位能を有し、ターンオーバー挙動を実質的に示さないことから、触媒としては機能しないことが判明した。 (2)トリフェニルホスフィンのカルボン酸誘導体のLa(III)錯体で種々の重金属をネットワーク化する手法により、Pd(II),Ru(II),Rh(II),Pt(II)の多孔体を得た。これらの有機ゼオライトはカップリングなど特有の反応を進行させる能力を有するが、還元された金属の再酸化が容易に起こらないことから触媒としての有効性には問題が残ることが明らかになった。 (3)アントラセンの代わりにアクリジンを用いるとアクリジンの窒素が一種のゲスとしてレゾルシンの水酸基と結合する(自己相補的)ことから、配位飽和の多孔体が得られ、ゲストであるベンゼンの脱着に際し、真の"多孔性"を維持することが分かった。 (4)レゾルシンの代わりにイソフタル酸を用いるとカルボキシル基の水素結合ネットワークにより極めて強固な多孔体が得られ、加圧下のメタンを可逆的に脱着できることが分かった。また、結晶構造も明らかにできた。 (5)水中で安定な有機ゼオライトを得るための一環として大環状糖クラスターによる核酸のカプセル化を検討し、後者が50nm程度のナノ粒子に覆われた人工グリコウイルスが生成することを明らかにした。
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