研究概要 |
平成13年度にはX線進行波の実験を行い,左右非対称なX線反射パターンを発見することができたことを受けて,平成14年度には(1)X線反射率を計算しプロットする汎用プログラムを開発,(2)インターネット上でそのプログラムの公開,(3)白色X線を用いた多層薄膜の評価方法とその装置についての特許を出願,などを行った.また(4)非対称なX線反射パターンを理論解析し,(5)ヨネダウイングとの関連を明らかにした. (3)の白色X線による多層薄膜評価方法が本研究で今後さらに発展すると思われるので以下で説明する.白色X線を多層薄膜に入射させると,多層薄膜は,干渉によって強めあう波長のみを反射する.このX線の波長は,規則的で,強度は界面の整合性や密度の違いを反映することが明らかになった.また,X線のエネルギー分散検出器として従来のSi(Li)型半導体検出器を用いる時には,1万カウント毎秒程度の計数率で検出器が飽和してしまうが,本研究で用いたシリコン・ドリフト検出器の場合には数十万カウント毎秒でも飽和せず,本実験のように,X線管からの強いX線を反射させて検出するのに適していることがわかった.SPring-8の研究によると,シリコン・ドリフト検出器は,このように高い計数率での使用に向かないという報告がなされているが,このSPring-8の報告は明らかに誤りであることがわかった.さらにX線の入射角度をわずかに変化させることによって,X線が干渉する多層薄膜中での深さも変化させることができ,深さ選択的な多層薄膜の分析・評価ができることがわかった.
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