研究概要 |
白色X線を試料に照射したとき,臨界エネルギーよりも小さなエネルギーは試料表面で反射し,大きなエネルギーのX線は試料中に侵入し屈折する.試料が多層膜である場合には,反射したX線が表面や界面での反射によって干渉し,打ち消しあったり強めあったりすることに対応したエネルギー分布を持っており,膜厚や界面の化学状態を解析することができる事が過去2年間の研究でわかった.本年度の研究では,等角反射角度とずれた位置でエネルギースペクトルを測定し,どのような現象が起きているのかを検討した.また,エネルギースペクトルの角度依存性もあわせて測定した. X線管のターゲットにはMoを使用し,白色X線を試料に照射した.X線管と試料の間には,0.5mm径のスリット,0.15mmのソーラースリットさらに発散角0.1°の発散防止スリット,試料と検出器の間には1mm径のホールスリットを配置した.試料は(Mo/B_4C)_<30>/Siなどを用いた.(Mo/B_4C)_<30>/SiはSi上にMoとB_4Cを交互に蒸着したものであり,Mo層とB_4C層のそれぞれの膜厚は3.1nm及び3.8nmである.試料はホルダーの上に垂直になるように固定した.極角θを固定し,方位角φを変化させて反射光の測定を行った. θを0.4°,0.5°,0.6°などに固定してφを変化させると,エネルギースペクトルが低エネルギー側へシフトする事がわかった.このようなエネルギースペクトルのシフトは,理論計算と一致した.入射角度を固定し,検出器の角度を変化させながらエネルギースペクトルを測定することで,多層薄膜のキヤラクタリゼーションが容易に行える事がわかった.
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