研究概要 |
本研究では,液体クロマトグラフ法においてもっとも利用されているオクタデシル化シリカ(ODS)に類似した分離モード(逆相分配型)において光学分割を可能とする新規な液体クロマトグラフィー用分離剤の開発を目的として,申請者らが確立した側鎖が配向したクシ型ポリマーの主鎖末端をシリカに固定化する方法を光学分割に応用することを考えた。前年度までに光学活性を有する重合性モノマーとしてβ-アラニル L-グルタミン酸のカルボキシル基に2本の長鎖アルキル基を結合させ,末端にビニル基を導入した。また同モノマーの重合速度は濃度に著しく依存するということを確認し,シリカに固定するためにシランカップラーとの共重合を実施した。本年度は,不斉炭素を有しかつ環構造と電子吸引性の窒素原子を有することによるπ-π相互作用や静電相互作用などの多重相互作用が期待されるトリプトファンを導入した重合性モノマーを調製し,同モノマーを重合してシリカにグラフトすることで,キラル部位を配向・集積させることによる不斉認識能の増幅を利用したHPLC用のキラル固定相を作製し,光学分割への展開を試みた。具体的にはL-トリプトファンにエステル反応でオクタデカノールを結合させて長鎖アルキル基を導入し,さらに末端アミノ基にビニル安息香酸を結合させて重合性モノマーを調製した。同モノマーをシランカップラーとともに共重合してシリカに固定化し,このシリカハイブリッドをステンレスカラムに充填して液体クロマトグラフィーによる光学分割を行った。ダンシルフェニルアラニン,メチルp-トルイルスルホン酸および1,1'-ビ-2-ナフトールについて円二色検出器を用いて調査した結果,各サンプルにおいて不斉分割が達成された。
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