研究概要 |
昨年度は,ルテニウム錯体触媒を用いた2-フェニルピリジンのハロゲン化アリールによるベンゼン環オルト位アリール化反応に関して検討を行い,効率良く反応が進行する条件を見出した.この反応において,ピリジル基はルテニウムに配位してオルト位への反応を促進するディレクティンググループとして重要である.しかし,ピリジル基は他の官能基への変換が容易ではないため,官能基変換が容易な置換基をディレクティンググループとした反応の開発が望まれた.本年度は,イミノ基,オキサゾリル基をディレクティンググループとして有する芳香環の,ハロゲン化アリールによる直接アリール化反応を開発した.イミノ基はケトン,アルデヒド,アルコール,アミンに容易に変換可能であり,また,オキサゾリル基はカルボン酸,エステル,アミドに容易に変換可能である.すなわち,本反応はこれらの官能基を有する芳香環の直接アリール化を可能とした. 触媒に関しては,ホスフィンが配位したルテニウム系錯体が高い活性を示し,中でも[η^6-C_6H_6RuCl1_2]_2-4PPh_3系が最も高い活性を示した.さらに,塩基は炭酸カリウム,N-メチルピロリジノン,反応温度は120℃,反応時間は20-40時間という最適条件を得た.この条件下で転化率は90%程度となる.上記の反応に関して,様々な基質を用いて反応を実施し,適用範囲の検討を行った.様々な芳香族イミン類,オキサゾリン類とブロモベンゼンの反応では,アリール基として電子吸引性,供与性に関わらず様々な置換基を有するフェニル基が適用できることが分かった.アリール基の置換位置に関しては,オルト位,メタ位の場合は選択的にモノフェニル化体が生成し,パラ位の場合はジフェニル化体も生成した.さらに,アリール基としてフェニル基以外にもα-およびβ-ナフチル基等の縮環系芳香族が適用可能であることも明らかにした.
|