研究概要 |
ビタミンE(α-トコフェロール)は哺乳動物の抗不妊因子として見いだされたもので、現在では広範囲に効果を持つ安全な医薬品あるいは食品添加物(酸化防止剤)として広く大量に使用されている。本研究ではオルトキノンメチドの分子内付加環化反応による三環性クロマン化合物の高立体選択的な合成法を応用して、複数のヘテロ原子を含む光学活性三環性クロマン化合物の新しい合成法を開拓し、これを環開裂して天然型α-トコフェロールヘ誘導することによる新規の天然型α-トコフェロールの合成法を開発する。 先ず、新規化合物である内部ビニルスルフィド構造を含む1級アルコールの合成法について検討した結果、イソブチルアルデヒドジイソプロピルジチオアセタールから誘導した2, 2-ジメチルビニルイソプロピルスルフィドにジアゾ酢酸エチルを銅触媒の存在下に反応させ、生成物を還元することにより、まだ収率は十分ではないが、2-(2, 2-ジメチルビニルチオ)エタノールを合成することに成功した。 次にこのアルコールとサリチルアルデヒドとの反応について検討したところ、1, 4-オキサチアン環が縮合した三環式の新規複素環化合物を合成することに成功した。この場合、ビニルスルフィドアルコールの分子内付加の副反応が起きているため、目的物の収率はまだ低く、環化反応の条件の最適化が今後の課題である。 このようにして得られた複素環の還元的開裂、すなわち三環式化合物の1, 4-オキサチアン環を還元的に開環する方法について検討したが、ラネーニッケルや水素化トリブチルスズを用いる条件では開環生成物を得ることはできなかった。今後Birch還元等の方法を試みる予定である。 内部ビニルスルフィド構造を含む2級アルコールの最適構造の探索とその合成法について今後検討する予定である。
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