研究課題/領域番号 |
13555252
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
井上 誠一 横浜国立大学, 大学院・環境情報研究院, 教授 (90017939)
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研究分担者 |
村山 俊幸 高砂香料工業株式会社, ファイン&アロマケミカル研究所, 主管
本田 清 横浜国立大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (60231578)
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キーワード | サリチルアルデヒド / ビニルスルフィド / 1,4-オキサチアン / オルトキノンメチド / 縮合三環式化合物 / 縮合四環式化合物 / 生理活性クロマン |
研究概要 |
ビタミンE(α-トコフェロール)は哺乳動物の抗不妊因子として見いだされたもので、現在では広範囲に効果を持つ安全な医薬品あるいは食品添加物(酸化防止剤)として広く大量に使用されている。本研究ではオルトキノンメチドの分子内環化反応による三環性クロマン化合物の高立体選択的合成法を応用して、複数のヘテロ原子を含む三環性クロマン化合物の新しい合成法を開拓し、これを開環することによる新規の天然型α-トコフェロールの合成法を開発する。 先ず、BC環の構築原料となる6-メチル-4-チア-5-ヘプテン-2-オールの効率的合成法について検討した。光学活性体が容易に入手できる乳酸を原料とする方法は、チオールからビニルスルフィドへの変換が困難で、目的物へは誘導できなかった。代わりにクロロアセトンを原料とする新規合成法を見い出した。テルペノイド炭素鎖を有するスルフィドはWittig反応を用いて1炭素伸長し、チオグリコール酸エステルを作用させてビニルスルフィドとするごとにより、目的物の合成に成功した。 次にこれらのアルコールとサリチルアルデヒドとの反応について詳細に検討した。従来のTsOH触媒に替えて三フッ化ホウ素エーテル錯体を用いると副反応が抑止され、目的物が良好な収率で得られることを見い出しているので、この条件を用いて鎖状のアルコールで環化を行ったところ、良好な収率で三環性クロマン化合物が得られた。また、シクロヘキサノール型アルコールを用いると対応する四環性クロマン化合物が得られた。しかしながらテルペノイド型の長鎖状アルコールを用いた場合は、反応性の低下により20%程度の収率でしか目的物が得られていない。 このようにして得られた複素環の還元的開裂、すなわち三環式化合物の1,4-オキサチアン環を還元的に開環する方法について検討した。Birch還元の条件を用いたところC環のみでなくB環も開裂した置換フェノールが生成した。またSを酸化してスルホンとするとC環が脱離してクロメン化合物が得られ、これから目的とするクロマン化合物を合成することができた。 以上の検討により目的とするクロマン化合物のジアステレオ選択的な合成法を構築することができた。この新手法は他の生理活性クロマン化合物の合成にも応用できるものと思われる。
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