ポストメタロセン型の遷移金属錯体触媒を用いる新しいオレフィン系ポリマーの創製

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13555253
• 研究機関: 奈良先端科学技術大学院大学
• 研究代表者: 野村 琴広 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教授 (20304165)
• 研究分担者: 白井 博史 旭化成(株), 化成品樹脂開発研究所, 主事(研究職)
• キーワード: オレフィン重合 / オレフィン系ポリマー / 遷移金属錯体触媒 / ポリマーの精密合成 / チタン錯体触媒 / バナジウム錯体触媒 / 精密重合 / エチレン

研究概要

本課題は、従来の錯体触媒では合成が困難な新しいオレフィン系ポリマーの創製を指向した高性能遷移金属錯体触媒の設計と合成に関する。特に重合を精密に制御するポストメタロセン型の錯体触媒の創製と、各種単独・共重合体の特性解析を主に検討している。
平成14年度の主な研究成果は以下の通りである。新規高機能オレフイン系ポリマーとして幅広い用途展開が期待されるエチレンとスチレンとの共重合を検討した。従来では困難であった高スチレン含量かつ高分子量ポリマーの合成が、アリロキシ配位子を有する非架橋のハーフメタロセン型チタン錯体触媒を用いることにより達成できた。この共重合によるモノマーの相対反応性は使用する配位子上の置換基に依存した。この点はアミド配位子を有する架橋ハーフメタロセン型チタン錯体触媒でも同様で、使用するアミド配位子上の置換基に依存した。
上記アリロキシ配位チタン錯体では、使用する助触媒を最適化するとほぼ100%の触媒効率でオレフィン重合がリビング的な挙動を取り、高分子量で分子量の揃ったポリマーが得られた。この触媒の作用機構を解析すべく、ジアルキル錯体と各種ホウ素化合物との反応や触媒活性種のモデル化合物の単離・同定・構造解析を行い、各種助触媒の役割を明らかにした。
昨年度オレフィンの配位・挿入重合及びメタセシス重合に高い触媒活性を示したアリールイミドおよびアリロキシ配位子を有するバナジウム錯体を用いて、エチレン重合における触媒活性への配位子上の置換基効果を検討した。分子動力学計算より最もアルキルカチオンが安定化される(高い触媒活性を示と予想された)ジフェニルフェノキシ配位子を有する錯体は低温で高い触媒活性を示すこと、いずれの錯体触媒でもチタンと比べて少量のメチルアルミノキサン(MAO)助触媒で高い触媒活性を発現することが明らかとなった。以上の知見を基に、新しい高機能ポリオレフィンの精密合成と特性解析に関する研究をさらにつづけているところである。

研究成果

• [文献書誌] 野村琴広他: "Ethylene/styrene copolymerization by various (cyclopentadienyl)(aryloxy)titanium (IV) complexes -MAO catalyst system"Macromolecules. 34. 5388-5395 (2002)
• [文献書誌] 野村琴広他: "A study concerning the effect of organoboron compounds in 1-hexene polymerization catalyzed by Cp^*TiMe_2(O-2,6-^iPr_2C_6H_3). -Structural analysis for Cp^*TiMe_2(O-2,6-^iPr_2C_6H_3) and Cp^*TiMe(CF_3SO_3)(O-2,6-^iPr_2C_6H_3)-"Inorg. Chim. Acta (Special issue dedicated to Prof R.R. Schrock). 345. 37-43 (2003)
• [文献書誌] 野村琴広他: "Effect of ligand in ethylene/styrene copolymerization by [Me_2Si(C_5Me_4)(NR)]TiCl_2 (R=tert-Bu, cyclohexyl) and (1,3-Me_2C_5H_3)TiCl_2(O-2,6-^iPr_2C_6H_3)-MAO catalyst systems"J. Mol. Catal. A. (Invited paper for a special issue of 14^<th> international symposium on olefin metathesis and related chemistry). 130. 225-234 (2002)
• [文献書誌] 野村琴広他: "Effect of cyclopentadienyl and amide fragment in olefin polymerization by nonbridged(amide)(cyclopentadienyl)titanium(IV) complexes of the type, Cp'TiCl_2[N(R^1)R^2], -methylaluminoxane (MAO) catalyst systems"Macromolecules, in press (Web release on March 5, 2003)..
• [文献書誌] 野村琴広他: "Some reactions of Cp^*TiMe_2(OAr) and Cp^*TiMe(CF_3SO_3)(OAr) with 5-hexen-1-ol and 3-buten-1-ol, structural analysis for Cp^*Ti(CF_3SO_3)[OCH_2(CH_2)_3CH=CH_2](OAr)(OAr=O-2,6-^iPr_2C_6H_3)"Inorg. Chem. Commun.. 5/6. 517-522 (2003)
• [文献書誌] 野村琴広他: "Effect of aryloxo ligand for ethylene polymerization by (arylimido)(aryloxo)vanadium(V) complexes -MAO catalyst systems. Attempt for polymerization of styrene"Catal. Commun.. (掲載予定).