研究概要 |
本研究は、多孔性セラミックス固定化リパーゼ触媒の高効率化の達成、及びその触媒系を活用することによる超分子材料を意図した新規含フッ素化合物の開発を目的としている。本年度の成果を以下にまとめる。 1.昨年度に開発された多孔性セラミックスを担体とする固定化リパーゼ触媒のさらなる高効率化のため、ラセミ体アルコールの光学分割反応に用いるアシル化反応剤の最適化検討を行った。アシル化剤にはカルボン酸ビニルエステルを用い、カルボン酸のアルキル鎖部分の長さを変化させ、-40℃における固定化リパーゼ触媒の活性およびエナンチオ選択性を調査した。その結果、アルキル鎖の長さは触媒活性,エナンチオ選択性に対し大きく影響することが判明した。中でもブタン酸ビニルエステルを用いた場合、極低温化でも極めて高い触媒活性を維持したまま高いエナンチオ選択性を得ることに成功し、周定化リパーゼ触媒の実用化に近づいた。 2.上記多孔性セラミックス固定化リパーゼを用いて、光学的に純粋なペンタフルオロフェニル基を有する新規不斉1,2-ジオール,1,2-アミノアルコールの合成を行った。さらにその検討から得られた合成法を活用し、新規不斉1,2-ジアミンの合成にも成功した。1,2-ジアミンに導入されたペンタフルオロフェニル基の影響によるアミンの塩基性の変化を調べるため、アミンの共役酸の酸性度を測定した。電位差滴定及び計算化学による測定の結果、ペンタフルオロフェニル基を導入したジアミンの塩基性はフェニル基類縁体に比べ大きく低下していることがわかり、ペンタフルオロフェニル基の電子求引効果が顕著に働いていることがわかった。このような物性調査は超分子材料の創製に欠かせないものであり、ペンタフルオロフェニル基の特性を生かした超分子材料の開発に大きく役立つものと期待している。 以上のように、本研究は学問的かつ実用上にも有意義な成果を挙げている。
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