水中で不溶のパーフルオロヒドロキシメタクリレート(FHMA)や感温性を示すN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とスピロピランメタクリレート(SPMA)の共重合体を合成した。P(SPMA-FHMA)は水溶液中で適度に溶媒の水となじみがよく、金属イオンと光可逆的に錯形成することが確かめられた。この錯形成時に共重合体の呈色変化があり、金属センサとしての応用も期待された。また、感温性を示すP(SPMA-NIPAAm)共重合体においても、低温側で水中で溶解し、高温側で析出する感温性が観測できたため、光と熱の二つの刺激を用いた水中における金属イオンの吸脱着制御が見込めた。水溶液中で錯形成していないフリーな金属イオンの濃度がこのとき増加していることを電気化学測定で同時に定量しているため、P(SPMA-FHMA)やP(SPMA-NIPAAm)共重合体をもちいて、矩形波ボルタンメトリを行った。P(SPMA-FHMA)共重合体では、水中で不溶のため、表面だけの光照射となり、金属イオンの高い脱離効率が望めなかった。これと対照的に、P(SPMA-NIPAAm)共重合体は可視光照射時に水中に溶解させることができるため、万遍なく照射光を行き届かせることが可能となり、高効率な脱離効率が見込めた。さらに、温度を変化させることにより、溶解析出を可逆的に起こさせられるので、低温側における比較的透明性の高い状態での光照射はP(SPMA-NIPSSm)共重合体よりも高い効率の金属イオン脱離を観測することができた。
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