研究課題/領域番号 |
13555263
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研究機関 | 特殊法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩田 忠久 理化学研究所, 高分子化学研究室, 副主任研究員 (30281661)
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研究分担者 |
山根 秀樹 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教授 (30191365)
澤渡 千枝 静岡大学, 教育学部, 助教授 (70196319)
田口 一徳 理化学研究所, 高分子化学研究室, 研究員 (80332261)
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キーワード | 生分解性ポリエステル / 超高分子量 / ポリヒドロキシブチレート / フィルム / 繊維 / 冷延伸 / 結晶化 / 物性 |
研究概要 |
P(3HB)の溶融-結晶化フィルムをガラス転移点以上の室温で保存した場合、ラメラ結晶間に存在する非晶部の分子鎖が分子運動によって結晶部に取り込まれる、二次結晶化が生じる。この二次結晶化により非晶部の分子鎖には張力が働き、クラックが発生し、経時的に劣化する。これまで野生株が合成したP(3HB)では、分子量の低さ(重量平均分量:約60万)と高結晶性のため延伸処理は困難であった。しかし、遺伝子組換え大腸菌から合成した分子量350万の超高分子量P(3HB)から作製したフィルムにおいては、融点より約15低い160付近のオイルバス中で、加重熱延伸法により容易に再現性良く熱延伸することができた。熱延伸倍率を10倍にし、100で2時間熱処理を施したところ、破壊強度が36MPaから277MPaへと急激に増加した。更に、10倍に熱延伸を施した配向フィルムを、室温で更に1.5倍に延伸した後熱処理を施した二段階延伸・熱処理フィルムでは、破壊強度388MPa、破壊伸び25%、ヤング率2.9GPaと劇的に物性が向上した。 しかし、熱延伸は重量平均分子量300万以上のP(3HB)に対してのみ有効であり、大量生産が確立されている野生株の合成する分子量60万程度のP(3HB)には残念ながら適用できない。そこで我々は、分子量に依存しない延伸方法として、冷延伸法を開発した。P(3HB)を完全融解した後、直ちにガラス転移点以下の氷水中に強制冷却して非晶質のフィルムを作製する。この非晶質フィルムをガラス転移点付近で冷延伸することにより、分子量に依存することなく高配向性フィルムを作製することに成功した。非晶質フィルムから作製した高配向性フィルムは、熱処理を行うことにより形状を保持し、高い物性を示すようになる。更に、この冷延伸法は、一軸延伸だけでなく、二軸延伸にも適用できた。
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