研究概要 |
本研究は、再使用型ロケットの実現に向けてロケット用高速ターボポンプの長寿命化を図るために、現在寿命制限要素となっている自己潤滑玉軸受に替わり得る静圧・動圧ハィブリッド軸受を試作し、その静的・動的特性を実験的、理論的に解明することで、実用化に際して生じる課題の抽出とその克服を目指す。 本年度も液体水素中で120,000rpm、液体酸素・液体窒素中では60,000rpmまでの回転試験が可能な軸受試験装置の整備を進めた。現行のターボポンプではインペラー背面に設けた一種の流体潤滑スラスト軸受であるバランスピストンで軸方向推力の調整を行っているが、本試験装置では、深溝型玉軸受を用いることで軸推力調整を行っている。起動・停止時の過度状態における軸方向推力は玉軸受外輪がケーシングに接触することで受けるが、定常回転中は外輪外側に作動流体を供給し、外輪をラジアル方向フリーとして使用することにより玉軸受は軸方向推力だけを支持する構造とした。この結果、構造の簡略化と過度時における安定性の向上を図ることができた。また、非圧縮性を仮定した数値解析コードと圧縮性を考慮した解析コードを併用することにより動圧・静圧ハイブリッド軸受の性能計算を進め、基礎データの蓄積を図った。その結果、液体水素中、定常回転数120,000rpmで最適化された供試軸受では、リセス間にグルーブを有する静圧軸受に比べ動圧を有効利用するグルーブの無いハイブリッド軸受の方が、偏心率の広い範囲で動的安定性に優れていることが分かった。 さらに、ハイブリッドセラミック玉軸受を対象にした液体水素中で120,000rpmまでの回転試験を行い、流体潤滑軸受と比較するためのレファレンス・データを収集した。
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