研究概要 |
北海道南部のマンガン堆積環境からマンガン酸化活性を有する真菌(Phoma sp.)が分離された。このマンガン酸化真菌のマンガン酸化挙動に対する炭素繊維の共存効果を検討した。マンガン酸化細菌に対して推奨されている培地成分を基にして、peptone, yeast extract, glucoseがそれぞれ0.05 g/Lずつと数種の無機塩が少量含まれている培地で液体しんとう培養を行うと、50ppmのMn(II)イオンを1週間のうちにほぼ完全に酸化除去できることを確認した。これに炭素繊維を500℃で加熱処理(表面の疎水化処理剤を除くため)したものを輪にして浸漬させた場合には、真菌が繊維上に付着しながら増殖し、乳白色であったコロニーが次第に茶褐色へと変色した。つぎに3種の有機炭素源のうちglucoseを除くと、マンガン酸化速度はさらに速くなり、酸化挙動の再現性が明らかに高くなった。Yeast extractだけを除いた場合には、マンガン酸化速度は遅くなり、データのばらつきが目立つようになった。また、peptoneだけを除いてもマンガン酸化速度はあまり変わらなかった。これらのことから、炭素繊維は真菌の安定な増殖の場を提供していること、この真菌は有機炭素源を制限した場合にMn(II)イオン酸化活性を発現するようになること、ただし安定な酸化速度を維持するためにはpeptoneとyeast extractは不可欠であること、形成された沈殿物は非晶質マンガン酸化物であることがわかった。これらの結果は鉱廃水処理への応用に好都合な点が多々含まれており、今後さらにこの真菌による高濃度Mn(II)イオン酸化条件をさぐる必要があると考えられる。
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