研究概要 |
硫黄酸化細菌が液体培地に添加した元素硫黄を酸化して生成する無機酸(亜硫酸や硫酸)等を浸出剤に用いてゴミ焼却飛灰から亜鉛を浸出させ、浸出率に及ぼす操作因子の影響を実験的に検討した。浸出用細菌はA.brierleyi(DSMZ1651株)、液体培地は9K基礎無機塩培地(0.05w/v% Yeast extract 補足)である。添加する元素硫黄は、粒径25〜63μmの斜方晶系硫黄である。飛灰はガス化溶融炉飛灰(1.34wt% Zn、粒子径20μm以下)であり、この飛灰を水洗した後に浸出実験に用いた。 A.brierleyiによる溶融飛灰の浸出実験を行った結果、元素硫黄を添加しない場合には亜鉛の浸出は起こらなかった。ところが元素硫黄を添加した場合、液相菌体濃度は3日目から指数関数的に増加するに伴い、溶液pHは初期値pH 5.Oから7日目にはpH 1.O付近まで低下するとともに、亜鉛の浸出率は5日目にはほぼ100%に達した。A.brierleyiが元素硫黄を酸化して無機酸(亜硫酸、硫酸)が生成され、これら無機酸の化学的作用によって溶融飛灰中の亜鉛が浸出したと考えられる。 微生物浸出実験における亜鉛浸出率を、硫酸溶液だけを用いた浸出実験の結果と比較した。硫酸溶液による化学浸出実験を65℃で4日間行い、飛灰からの亜鉛浸出率を各溶液pH(pH2,3,4)で測定した。微生物浸出での亜鉛浸出率は、硫酸だけの場合に比べて著しく増加することがわかった。これら実験結果から、飛灰の微生物浸出では、硫酸の寄与だけではなく、還元作用の強い亜硫酸またはA.brierleyiの代謝産物が寄与していると推測される。初期硫黄添加量をW_<so>/V=0.5〜40kg/m^3の広範囲に変えて溶融飛灰の浸出実験を行い、7日目における亜鉛浸出率を比較した。その結果は、溶融飛灰の微生物浸出では、元素硫黄の添加量に最適値(5〜10kg/m^3)が存在することが明らかになった。
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