研究課題
過去2カ年の交配試験によって得た高稔性2倍体系統に由来するS_1世代種子を播種し、973系統のS_1植物を育成した。このうち306系統(31.4%)が開花したので自家授粉(合計1187花)を行い、139系統(45.4%)からS_2世代種子を得ることができた。これまでに32の2倍体系統に自家不和合性阻害遺伝子(Sli)供与系統を花粉親として交配したが、15系統ではその雑種から全く自殖個体を得ることができなかった。その原因を明らかにするため、これら32系統の葉緑体DNAを調査した。その結果、自殖個体を得ることのできた17系統はAないしS型葉緑体DNAを持ち、自殖個体が得られなかった15系統はWないしT型葉緑体DNAを持っていた。したがって、後者ではWないしT型葉緑体DNAを持つ細胞質に起因する雄性不稔性のためSli遺伝子を持っていても自殖ができないものと推論された。Sli供与系統(97H32-6)のS_1からS_4世代植物(自殖系列A)、および2倍体優良系統WB922236-2と97H32-6のF_1雑種から自殖世代を進めて得たS_1からS_5世代植物(自殖系列B)について、それぞれ62および59RFLP座および304および326AFLPマーカーを用いて異型接合性程度を測定した。異型接合性の自殖世代当たり平均減少程度は理論値である50%よりも低く、自殖系列Aで37.0%、自殖系列Bで38.9%であった。また、異型接合型を示すRFLP座は、自殖系列AのS_4世代植物と自殖系列BのS_5世代植物で異なり、自殖過程で絶対的な異型接合型遺伝子座は存在しないものと考えられた。したがって、ある程度の稔性や生存力が維持され自殖世代を進めることができれば、2倍性純系の育成は可能と考えられる。
すべて 2004
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Memoirs of Graduate School of Science and Technology, Kobe University 22-A
ページ: 115-121