研究課題
基盤研究(B)
バレイショのイモ収量は雑種強勢に依存しているが、同質4倍体で四染色体的遺伝を行うため、発現機構の解明は極めて困難である。これを解明しその育種的利用を図るため、4倍性純系の育成を目指し、本研究では自家不和合性阻害遺伝子(Sli)を利用して2倍性純系の育成を行った。2倍体32系統にSli遺伝子供与系統を交配しその雑種の自家授粉を行ったところ、AないしS型葉緑体DNAを持つ雑種個体の67.1%でS1種子を得ることができ、さらにS1植物のうち44.2%でS2種子を得ることができた。しかし、W型葉緑体DNAを持つ雑種個体のほとんどからは自殖種子を得ることができず、その原因は細胞質雄性不稔性によるものと考えられた。RFLPおよびAFLPマーカーを用いて自殖世代ごとの異型接合性を測定した。Sli遺伝子を持つ2倍体系統97H32-6およびこれと優良栽培2倍体系統との雑種をそれぞれ100%とすると、前者のS4植物では10.7%となり、後者のS5植物では8.6%となった。世代当たり平均異型接合性減少率はそれぞれ38.4%および38.5%で、理論値50%に比べ低かった。しかし、いずれの集団においても異型接合性を共通に存続させているRFLP座は見つからず、したがって、自殖を繰り返すことにより2倍性純系の作出は可能と考えられた。S3植物51個体について、RFLPマーカーに基づく異型接合性程度と稔性関連形質(開花の有無、自殖率、果実当たり種子数および花粉稔性)を調査した。少なくとも8カ所の染色体部位に局在する9のRFLP座が稔性関連形質と相関が見られ、それぞれの形質に対し、異型接合型で優れた稔性を示す座と、同型接合型で優れた稔性を示す座が認められた。自殖世代の進行とともに自殖率の低下が見られるが、S5植物におけるこれら稔性関連RFLP座では、より優れた稔性を示す同型接合型に固定される傾向が見られた。
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Memoirs of Graduate School of Science and Technology, Kobe University 22-A
ページ: 115-121
Memoirs of Graduate School of Science and Technology, (Kobe University) 22-A