光エネルギー利用ガス→ガス変換植物の創成と環境修復への活用の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13556002
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 森川 弘道 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00089129)
• 研究分担者: 高橋 美佐 広島大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10294513) ; 坂本 敦 広島大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60270477)
• キーワード: 亜酸化窒素 / 窒素酸化物 / 硝酸性窒素 / 脱窒 / 亜酸化窒素還元酵素(N_2OR) / シロイヌナズナ / バイオインフォマティックス / 同位体窒素分析

研究概要

植物はNO_2ガスや硝酸性窒素を亜酸化窒素(N_2O)に変換する能力を有している。N_2Oガスは地球温暖化ガスであると言われている。そこで、本研究では、遺伝子操作・選抜などにより、高等植物に「N_2OガスをN_2ガスに還元する能力」を付与し、以てNO_2ガスを無害なN_2ガスに変換する「ガス→ガス変換植物(脱窒植物)」の分子育種を目的とする。
1.noszの発現プラスミド導入形質転換植物の解析(高橋)
嫌気性脱窒細菌Pseudomonas stuzeri由来のnosZの発現ベクターを発現させたシロイヌナズナ形質転換体を得た.また、nosZの発現ベクターに加えて、nosD、nosF,nosYの発現ベクターを同時に導入したタバコ培養細胞を作出した。これら形質転換細胞、個体粗酵素標品を調製し、N_2OR活性をベンジルビオロゲン法による測定したが活性は検出されなかった。
2.植物のN_2OまたはN_2生成能の解析(森川)
17種の無菌的に育てた植物におけるN_2O発生を15Nラベルの化合物を用い、質量分析法により調査したところ、一種(Eucalyptus viminalis)を除いて全ての種でN_2O発生を示す結果が得られた。Eucalyptus viminalisではN_2O発生はゼロまたは負(N_2Oの吸収を示唆?)であった。また、11種植物のN_2O発生とそれらの二酸化窒素同可能との間には高い負の相関関係(r=0.72)があった。(以上の結果は、2003年Acta Biotechnology誌に発表した。植物によるN_2ガスの生成については、それを肯定する結果は得られていないが、その可能性を完全に否定することもできない。
3.植物ゲノムにおけるNOR、N_2OR等脱窒遺伝子ホモログのバイオインフォマティックス(坂本)
全ゲノム配列の決定されたシロイヌナズナ、イネ等のデータを用いて、植物ゲノムにバクテリア脱遺伝子(NOR, N_2ORなど)のホモログがあるかどうかについて、調査した。これまでのところ、これら遺伝子のホモログの存在を肯定する結果は得られていないが、完全には否定もできない。

研究成果

• [文献書誌] M.Takahashi: "Assimilation of nitrogen dioxide in selected plant taxa"Acta Biotechnologica. 23. 241-247 (2003)
• [文献書誌] M.Hakata: "Conversion of the nitrogen of nitrate and nitrogen dioxide to nitrousoxide in plants"Acta Biotechnologica. 23. 249-257 (2003)
• [文献書誌] A.Sakamoto: "Functional complementation in yeast reveals a protective role of chloplast 2-Cys peroxiredoxin against reactive nitrogen species"Plant Journal. 33. 841-851 (2003)
• [文献書誌] H.Morikawa: "Screening and genetic manipulation of plants for decontamination of pollutants from the environments"Biotechnology Advances. 22(1). 9-15 (2003)
• [文献書誌] H.Morikawa: "Basic Processes in Phytoremediation and Some Applications to Air Pollution Control"Chemosphere. 52(9). 1553-1558 (2003)
• [文献書誌] O.C.Erkin: "Development of regeneration and transformation systems for Raphiolepis umbellata L.plants using particle bombardment"Plant Biotechnology. 20. 145-152 (2003)
• [文献書誌] 坂本 敦: "植物細胞の膜輸送系とファイトレメディエーション"植物細胞工学. 146-150 (2003)
• [文献書誌] 森川弘道: "窒素同化とNOx代謝"蛋白質核酸酵素. 48(15). 2130-3137 (2003)
• [文献書誌] 森川弘道: "ファイトレメディエーション"ファルマシア. 39(9). 876-880 (2003)
• [文献書誌] 高橋美佐: "樹木によるファイトレメディエーション"林木の育種. 207. 26-28 (2003)
• [文献書誌] H.Morikawa: "Formation of previously-unknown unidentified nitrogen in plants : an implication for a novel nitrogen metabolism"Planta. in press.
• [文献書誌] H.Morikawa: "Phytoremediation : Transformation and Control of Contaminants"John Wiley and Sons, Inc. 987 (2003)
• [文献書誌] 森川弘道: "環境修復と有用物質生産"シーエムシー出版. 350 (2003)
• [文献書誌] H.Morikawa: "Nitrogen and sustainable plant productivity"Studium Presss(in press).
• [文献書誌] 森川弘道: "生物工学ハンドブック"コロナ社(in press).