研究概要 |
本年度はまず,根圧の測定を通じて根の水の透過性や溶質の透過性を解析するための装置を作成し,本研究の目的にかなった根圧の測定が正確にできるか否かを,水耕栽培した水稲品種日本晴の冠根を用いて検討した.結果の概要は以下の通りである. (1)根圧は根を装置に取り付けた直後より大きく上昇し,その後上昇速度が小さくなり,0.1〜0.2MPaの範囲の比較的安定した値が12時間以上にわたって維持された.その後根圧はゆるやかに減少した. (2)水耕液の温度を下げると,根圧は直ちに低下し,温度を上げると直ちに高くなり,根圧は水温の変化に敏感に反応して変化した. (3)マンニットを加えて水耕液の浸透ポテンシャルを低下させると,根圧はゆるやかに低下し,通常の水耕液に戻すと根圧はゆるやかに高くなり,マンニットを加える前の値に近づいて一定となった. (4)異なる生育段階に発根した若い冠根の根圧の最大値は0.1〜0.2MPaの範囲にあった.また,発根後の日数が経過しても最大根圧には大きな変化が認められなかった. (5)以上の結果から,本装置を用いた根圧の測定を通じて,水稲冠根の水の透過性や溶質の透過性を解析できる可能性のあることがわかった. 次年度はトウモロコシやマングローブについても同様な検討を行い,さらに耐塩性の異なる各種植物の根の透過性,根のNaCl輸送特性を明らかにしていきたい.
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