研究概要 |
熱帯、亜熱帯の沿岸海水域に生育するマングローブ植物は耐塩性の高い植物として知られている。そこで、本年度はマングローブ植物ヤエヤマヒルギを用い、幼植物の切断根のNaCl輸送特性を、水耕液のNaCl濃度を変化させた後の根圧の変化から、根のNaClの反射係数とNaClの透過係数を求め(非定常状態における測定)、他の植物の測定結果と比較した。併せて、根の切り口に吸引圧を加え、吸水量と木部液の浸透ポテンシャルを測定し(定常状態における測定)、水耕液のNaCl濃度と木部液の浸透ポテンシャルとの関係を求めた。得られた結果の概要は以下の通りである。 1.非定常状態で根圧測定から求めたヤエヤマヒルギの根のNaClに対する反射係数の平均値は0.08で、この値は他の草本植物に比較すると著しく低かった。ヤエヤマヒルギの根のNaClの透過係数の平均値は1.6×10^<-9>ms^<-1>で、これも他の多くの植物種に比較すると低いことがわかった。 2.常状態で測定したヤエヤマヒルギの切断根の水吸収速度は、水耕液のNaCl濃度が200mMの時に最大で、NaCl濃度が0mM、500mMの水耕液では水吸収速度は小さく、この結果は完全な植物体の吸水速度に及ぼす水耕液のNaCl濃度の影響と同様であった。さらに、根の切り口から採取した木部液の浸透ポテンシャルは水耕液の浸透ポテンシャルと常にほぼ等しかった。 3.以上2つの異なる測定から得られた結果はいずれも、ヤエヤマヒルギでは水吸収に伴うNaClの取り込みは少なくとも切断根ではほとんど制御されていないことを示している。 次年度以降はさらに耐塩性の異なる作物品種のNaCl輸送特性についても本装置を用いて検討し,評価法の確立に資する予定である。
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