研究概要 |
[目的]食糧の持続的・安定的な生産は,食生活を支え人類を存続させる上で,必要不可欠である.食資源として極めて重要な家畜は,消化管感染症に罹患し慢性化しやすく,結果として,家畜の生産性の著しい低下と抗生剤の大量使用を招き,産業的被害が深刻な問題となっている.本研究では,乳業用乳酸菌DNAのこれまでの知見を基礎とし,乳業用乳酸菌とそのDNAモチーフにより副作用のない安全な,しかも有効なアジュバントを兼ね備えた,新規な経口ワクチンを開発することを目的としている.本年度は特に,乳酸菌DNAの活性発現における認識性と取り込みについて,TLR9遺伝子導入細胞を用いて解析することを目的とした. [方法]昨年度クローニングに成功したブタTLR9遺伝子を強制発現させた哺乳類細胞を構築し,病原細菌および乳酸菌由来DNAモチーフの認識性ち取り込み解析をレーザー顕微鏡およびフローサイトメトリーにより行った. [結果]DNAモチーフの評価系として利用可能な,哺乳類細胞を用いたブタTLR9発現細胞の作出に成功した.本発現細胞を用いた病原細菌(E. coli)および当研究室で発見した乳酸菌由来各種DNAモチーフの取り込み解析から,E. coli由来CpGモチーフと同程度の取り込みが認められた.また,CpG配列を持たず,免疫刺激機能が無いことで知られるnon CpG DNAモチーフも同程度取り込まれ,TLR9のリガンドがCpG DNAであるという従来の見解に疑問を提起した.本年度の研究から,ブタTLR9発現細胞によるDNAモチーフの取り込み解析より,TLR9を介するDNAモチーフの取り込み強度と以降の活性化シグナルの誘導には相関関係は低く,腸管の常在性乳酸菌由来DNAに対する免疫応答の巧妙な調節機構の一端も示唆された.
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