研究概要 |
[目的]食糧の持続的・安定的な生産は,食生活を支え人類を存続させる上で,必要不可欠である.食資源として極めて重要な家畜は,消化管感染症に罹患し慢性化しやすく,結果として,家畜の生産性の著しい低下と抗生剤の大量使用を招き,産業的被害が深刻な問題となっている.本研究では,乳業用乳酸菌DNAのこれまでの知見を基礎とし,乳業用乳酸菌とそのDNAモチーフにより副作用のない安全な,しかも有効なアジュバントを兼ね備えた,新規な経ロワクチンを開発することを目的としている.本年度は,乳酸菌DNAのアジュバントとしての活性発現機構を,とくにサイトカイン産生を指標に解明するとともに,乳酸菌DNAが作用する腸管組織におけるTLR9の局在性を調べ,腸管における活性発現の可能性について検討した. [方法]ブタパイエル板および腸間膜リンパ節の細胞を乳酸菌DNAで刺激後,定量的PCR法により各種サイトカインmRNAの発現量を測定した.また,作成したブタTLR9ポリクローナル抗体を用い,腸管関連リンパ組織におけるTLR9発現の局在性を免疫組織化学的手法およびフローサイトメトリー法により解析した. [結果]乳酸菌DNAの刺激により,成熟ブタパイエル板細胞から,IL-6,IL-12p40およびIFN-γmRNAが強く発現することが判明した.免疫組織学的染色法により,成熟ブタのパイエル板および腸管膜リンパ節で強いTLR9の発現が認められた。フローサイトメトリーを用いた細胞レベルでの解析により,パイエル板における上皮細胞および樹状細胞に強いTLR9の発現が認められた.以上のことより,生体内の腸管免疫系において,乳業用乳酸菌由来DNAがTLR9を介して免疫応答を誘導する可能性が強く示唆され,乳酸菌DNAのアジュバントとしての活性が期待された.
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